2021年9月29日放送

フードロス解消に 食品の質も保つ液体凍結機

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国内では年間600万トンの食品が、食べられるにもかかわらず捨てられてしまっている現状があります。こうしたフードロスを解消しようと柏崎市の企業が開発した、特殊な冷凍技術を使った取り組みが進められています。

金属製の容器を開けると、白い液体に漬かっているのは新潟を代表する夏の味覚・茶豆です。この茶豆、実は...。

【記者リポート】
「スプーンで叩いてみます。カッチカチに凍っています」

特殊な技術で急速冷凍されています。この茶豆は、本来であれば廃棄されるはずでした。

新潟市西区のサンクスファーム黒鳥です。

【サンクスファーム黒鳥 大岩和正さん(31)】
「需要が秋に向けて減っていく中で、余ってしまう枝豆がその年によって出てくるという問題があります」

サンクスファーム黒鳥では、8ヘクタールの畑で年間30トンの茶豆を生産しています。茶豆のシーズンは6月下旬からのわずか3か月間です。

生産量のうち数パーセントは旬のシーズンを過ぎてしまい、サンクスファーム黒鳥では多い年でおよそ800キロを廃棄せざるを得ない状況でした。そこで大岩さんが取り組んだのが、余ってしまう茶豆の冷凍でした。

【サンクスファーム黒鳥 大岩和正さん】
「冷凍することによって、旬の時期以外でも販売につなげたりとか、仕事の回りも良くなることもあって冷凍茶豆に取り組みました」

冷凍販売のために去年、新たに導入したのが、液体を使って凍結する機械です。普通の冷凍庫と何が違うのでしょうか。

【アルバネクス 宮山勝彦会長】
「液体は一番、熱を伝えやすいんですね。空気よりも液体の方が20倍速く熱を伝える」

液体凍結機を開発・販売している、新潟県柏崎市のアルバネクス・宮山勝彦会長(77歳)です。

【アルバネクス 宮山勝彦会長】
「では、漬けます」

真空パックに入っているのは、サーモンの切り身です。その切り身が液体に漬かると徐々に色が白く変わり、わずか30秒ほどで凍ってしまいました。

液体の正体はマイナス36℃に冷やされたアルコール液です。アルバネクスによると、一般的な冷気を吹き付けることで冷凍した食品は、氷の結晶が発生して食品の細胞を傷付け、栄養分やうま味が外に出てしまうそうです。

そこで、宮山会長は「液体」に目を付けました。液体を使った冷凍は空気よりも20倍早く冷やすことができ、食品の細胞を傷付ける氷の結晶が小さくなり、食品は傷付きにくくなるということです。そのため解凍した後も、冷凍する前とほぼ変わらない品質を保つことができます。

【アルバネクス 宮山勝彦会長】
「前にたまたま大型の機械に出合って、いい物だなと思ったけれど、大型というのは工場でしか使えない。これを一般の店でも使えるようになったら素晴らしいなと思った」

これまでの液体凍結機は主に工場などで使われていて、どうしてもサイズが大きいものばかりでした。アルバネクスは8年前から居酒屋やホテルの厨房などでも使える小型サイズの液体凍結機の開発を進め、去年、製品化に漕ぎつけました。

【アルバネクス 宮山勝彦会長】
「全国でもマイナス49℃まで設定できるものはないです。当社だけです。独自の技術です」

去年、アルバネクスの液体凍結機を導入したサンクスファーム黒鳥の大岩さんも、茶豆の味が冷凍しても変わらないことに驚いたと話します。

【サンクスファーム黒鳥 大岩和正さん】
「茶豆本来のコクと食感も大事なので、それをそこまで損なわさずにうまく冷凍に仕上がるので、そこは本当に高い評価を会社でもしています」

アルバネクスの液体凍結機は、同じ柏崎市にある委託先の工場で全て製造されています。これまでに、およそ100台を全国各地へ出荷してきました。宮山会長はこの液体凍結機を全国に広めることで、食品が捨てられるフードロス問題の解決につなげたいとしています。

【アルバネクス 宮山勝彦会長】
「加工して凍結して保管すれば、従来みたいに仕入れてきて調理して、余ったら余った分は捨てるということではなくて、あらかじめ段取りができるということで、フードロスをなくすんじゃないかと思っている」

今年、サンクスファーム黒鳥は、余ってしまう茶豆200キロを冷凍茶豆として売り出す予定です。さらに大岩さんは冷凍茶豆にとどまらず、フードロス解決に向けて取り組みを広げる計画を立てています。

【サンクスファーム黒鳥 大岩和正さん】
「知り合いの農家で果樹農家さんがいるので、そういうところのロスも一緒になって考えていけたら。果物の冷凍とかも、これから考えていければなと思っています」

液体凍結機の可能性に、大岩さんは期待を膨らませます。

【サンクスファーム黒鳥 大岩和正さん】
「アルバネクスさんの凍結機を使うことによって、違う時期に・空いた時期に違う形でお客さまに届けられるというのは、新たな農業の強みになってくれればいいなと思っています」

アルバネクスが手がける、食品の質を保ったまま冷凍する液体凍結機。フードロスの解消につながる取り組みが新潟から広がりつつあります。

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