近藤丈靖「恐山の旅」
2011年10月13日 19:32
一人旅で、日本の三大霊場の一つ、恐山に行ってきました。 新潟駅から特急「いなほ」「つがる」を乗り継ぎ、青森駅へ。そこから大湊線で下北駅へ。
その 下北駅からさらにバスで40分で恐山に着きました。 片道だけで所要時間8時間以上の長旅でした。
恐山は山の名前でなく、霊場の名前。寺と同じで、山門から入ります 。 敷地は広大で、本堂や宿坊など様々な建物が立ち、 木造の無料の温泉小屋(男湯、女湯、混浴)があり、強い硫黄の香りが漂います。 そして、広大な岩山も広がり、それは地獄の風景を思い起こさせます。
その岩山を歩いていると、そこには、所々に信者の方が積み重ねた小石の山が数多く見られ、赤い衣をまとったお地蔵様が散在し、故人の供養の意味が込められた風車が風を受けてカタカタ音を立てて立っています。そして、それらの殺伐とした石と岩の世界を抜けると、白い砂利の湖畔、エメラルドグリーンの湖、緑鮮やかな山。心が現れるような美しい風景が待ち受けます。
その風景を見て、私はカナディアンロッキーを思い出だしました。地獄を抜け、極楽へ。そんな意味があるのだそうです。
そして、恐山にはイタコがいます。「故人の声が聴きたい」とお願すると、中にいるイタコがその人のために故人からのメッセージを代弁して伝えるのです。
この儀式は口寄せと呼ばれています。広島、千葉など、全国各地から、亡くなった両親や兄弟と話をしに訪れていました。私自身はお願いしませんでしたが、口寄せの様子を半日を程、横で見せて頂きました。口寄せを終えた参拝者の方は、満足そうな表情の方が殆どで、大切な故人と話をしているような気持ちになれて、自然に涙が出てきたとおっしゃる方もいました。イタコは高齢のおばあちゃんです。私が行った時には2人いらっしゃいましたが、体力の問題もあり、現在イタコは実質その2人しかいないそうです。後継者もなく、近い将来消えてゆくかもしれないイタコの伝統。貴重な風景を目に焼き付けました。
恐山・・・。
故人と生者が再会するその場所は、訪れるまでおどろおどろしいイメージしかありませんでした。しかし、そこは、本当に雄大で風光明媚な自然が残る別天地でした。そして、死者を意識する事を通じて、いかに生きるかを考えさせられる場所でした。年配の方だけでなく、笑顔いっぱいの若者のグループや、カップルの姿もありました。新潟からは遠いですが、気軽な気持ちで一度訪問されることをお勧めします。
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