第1回目は新潟大学医学部の曽根先生に、健康寿命とは何か、健康寿命を伸ばすために大切なことは何か、など、健康寿命に対しての基本的なお話しをお聴きしました。
 

Q.「健康寿命」は「寿命」とどう違うのでしょうか?

寿命が生きている年数を言うのに対して、健康寿命とは簡単に言うと、「健康上の問題で介護などを受けずに、自立して生活できる期間」のことです。

 

Q.日本人の寿命と健康寿命はどれくらいですか?

寿命は、女性約86歳、男性約80歳なのですが、健康寿命は大体それより平均して約10年短くなっています。つまり、日本人は平均して、生涯最後の10年間は、介護や医療を受けながら、「健康」とは言えない状況で過ごしているということになります。

 

Q.なぜ今、健康寿命がこれだけ注目されているのでしょうか?

日本では、医療レベルが進歩し、「寿命」がほぼ世界一になり、ご高齢の方が増えました。

当然ながら元気で充実した老後を過ごしたいということが、皆さん共通の願いになりつつあるのだと思います。ご高齢の方々と接していても、「長生きしたい」から、「元気であれば長生きしたい」という声を多く聞きます。

高齢化社会では、健康保険などの医療費も大きな問題になっています。元気で活躍できる高齢者が増えることは、社会全体にとっても望ましいことですので、国を挙げて、健康寿命を伸ばすことに、集中して取り組んでいるということもあります。

 

Q.健康寿命はいつ頃から気に掛ければ良いですか?

もちろん何歳になっても手遅れということはないのですが、早ければ早いほど良く、実は新入社員のときから気をつけるのがベストです!

健康寿命を縮めるような健康上の良くない出来事(例えば人工透析、心筋梗塞、脳卒中、認知症など)は、数十年間の、糖尿病、高血圧、コレステロール、肥満などの生活習慣病の蓄積効果によって起きてきます

したがって、若いうちから、糖尿病や肥満症のような生活習慣病にならないようにすることが重要です。

実際に新潟大学の研究でも、30代に糖尿病になってしまった男性は、そうでない方に比べて、心筋梗塞のなりやすさが20倍も高まるというショッキングな結果が出ています。

 

Q.具体的にはどのようなことに気をつければ良いのでしょうか?

大事なことは、4つあります。

1番は「禁煙」、2番は「食事」、3番は「運動」、4番は「検診を受けること」です。 

 

Q.まず禁煙について教えて下さい。

 

タバコは、がん、心臓病、脳卒中、肺気腫と言って年をとってから息苦しくなる病気、など多くの、健康寿命を短くする病気のもとになります。たとえ一本でも良くないというデータがあります。

 

Q.食事について大切なことは何でしょうか?

大切なのは、適度な量とバランスを意識することです。若い人や男性は特に、野菜をしっかり取って、太り過ぎないように、逆に高齢者の方は、魚や肉などのタンパク質をしっかりとって、痩せ過ぎないようにすることが大事ですね。

 

Q.お酒についてはいかがでしょうか?

お酒は適量であれば良い面もたくさんあります。しかしあくまで、それは適量であればという条件付きです。一日につき、日本酒やワインで一合、ビールで大瓶一本までの量を守ってください。 

 

Q.運動で心掛けることはありますか?

 

一日30分、速足で歩ける程度の運動ができれば理想的です。

忙しくてまとまった運動時間がとれない場合でも、少なくとも一日中座りっぱなしにならないように、ちょこちょこと動き回ることも有効であることが分かってきました。

 

Q.検診についてはいかがでしょうか?

健康寿命を縮めるような良くない出来事(人工透析、心筋梗塞、脳卒中など)は、今の医療レベルでは、生活習慣病を早めに発見し改善させることで、かなり防ぐことができます。

癌も早く見つかれば、いろいろな治療ができる時代になっています。

たとえば、現在日本では毎年1万6千人もの方々が、糖尿病によって人工透析開始に追い込まれていますが、今の医学レベルでは、糖尿病を早期に発見し、中断せずに治療を続ければ、人工透析はほぼ防ぐことができます。

しかし検診を受けなければ、たとえば糖尿病などの重要な生活習慣病を見逃すことになり、健康寿命を伸ばすチャンスを失うことになります。

 

Q.4月(春先)に特に気を付けることがあれば教えて下さい

歓迎会なども多く、一人暮らしを始められる人が多いと思いますので、食事のバランスに気をつけたほうが良いですね。また、新しい職場や部署で忙しくなることも多いと思いますが、暖かくなり、桜も咲いて素晴らしい季節になりますので、歩く量を増やすようにすると良いですね。