受動喫煙を防ぐための「改正増進法」により、7月から病院や行政庁舎の施設内禁煙の義務化が始まります。
タバコ対策の現状と、社員の禁煙に積極的に取り組む企業を取材しました。
■ 新潟県の取り組み
2,000人以上が働く新潟県庁。
敷地内には現在15か所の喫煙所があり、建物内にもほとんどの階に喫煙所が設けられています。
しかし法律の改正をうけて、7月1日までに全て撤去される予定です。
職員の喫煙率はおよそ14%。
愛煙家からは、こんな声も聴かれました。
「ただでさえ肩身が狭いのに、もう居場所がない」
「隠れて吸い出す人がいて、かえって危ないのではないか?」
こうした声も受け県では、国の基準で設けられた「受動喫煙の防止ができる」敷地内の屋外に喫煙場所を作る予定です。
一方で県は、喫煙所の廃止を機に、職員の禁煙に対する意識を高めようと、禁煙外来の治療費の一部補助や啓発セミナーを開催しようとしています。
県総務監理部人事課 太田正之副参事は
「禁煙を通じて健康増進や疾病予防、受動喫煙防止につなげたい。」
と話します。
東京オリンピック開催などを背景に、改正された健康増進法。
今年7月から、行政庁舎や病院、学校の敷地内が原則的に禁煙になり、
来年4月からは飲食店、ホテル・旅館なども原則屋内は禁煙となります。
■ 環境整備のもたらす効果
タバコ対策を研究する新潟大学医学部保健学科・関奈緒教授はこの流れを歓迎しています。
「2003年に健康増進法ができて。喫煙場所が減っていったのが大きかったですね。
環境整備は禁煙に向かわせる力がかなりあります。
行政などの機関が全面禁煙になると、その後に一般の企業もどんどん進んでいくので、
まずそこでき ちんと進めるのが大切だと思います。
ただ、敷地内禁煙などの環境整備だけをすすめるのではなくて一緒に禁煙サポート、
禁煙する人の手助けも進めていかないと片手落ちになってしまいます。」
また関教授は、市場が拡大する加熱式タバコについて、今の段階では絶対安全とは言い切れないといい、
「家の中で吸えなかった人が、加熱式タバコなら大丈夫だろうと、家のなかで吸い始めたり、
子供の前で吸ったりということは、受動喫煙対策で大きな問題点になっています。
立ち上る煙はありませんが、吸った煙の1/3は吐かれて外に出ます。
それを子どもが吸うわけですので、全く受動喫煙がないとは言えません。」
と注意を促しています。
■ 禁煙に取り組む企業
規制が強化される中、禁煙に取り組む企業も増えています。
長岡市にあるサカタ製作所。
こちらは主に屋根やソーラーパネル取り付けに使う金属部品を製造しています。
このサカタ制作所は6月から就業時間中の全面禁煙を打ち出しました。
就業規則に盛り込み、休憩時間や社外にいても、始業から終業までの喫煙を禁止しました。
坂田 匠 社長
「就業外については拘束できないので、せめて禁煙のきっかけ作りということで、会社にいる間は一切タバコを吸うのをやめましょうね、と言っています。」
かつて30年の愛煙家だった坂田社長ですが、9年前心筋梗塞で倒れたことをきっかけに、禁煙を始めました。
「悪いというのは知識として知っていたが、自分が深く実感したことによって、少しずつ喫煙している社員にプレッシャーをかけていこうと考えました。」
サカタ製作所は約3年前に多額の費用を投じて、立派な喫煙室を作りました。
しかし、中はかなり居心地が悪い設え。
壁一面に禁煙に向かわせるメッセージポスターを貼っています。
この喫煙室も6月に廃止されます。
朝礼でタバコの危険性について何度も伝えたり、年末に禁煙成功者を表彰するなど、着実に禁煙に対する意識を高めていきました。
社内の喫煙者は取り組み前の約半数に減少したと言います。
禁煙を始めたことで、健康への意識が高まって土日の朝にランニングをするようになった、という社員もいました。
こうした取り組みが評価され、今年財団法人が認定するサカタ製作所は
一般財団法人日本次世代企業普及機構(ホワイト財団)が実施しているホワイト企業アワードで、全国1091社の応募の中で最優秀賞を受賞しました。
サカタ製作所はさらに今年の採用から、喫煙者は採用しないという方針になりました。
徹底した姿勢を貫く坂田社長。
就業中の全社員の全面禁煙を決めて以来、“自身も何かを我慢しないといけない”との思いから大好きだった飲酒をやめています。
厚生労働省の調べでは新潟県民の喫煙率は20%で全国16位でした。
様々な規制・取り組みにより、狭まっていく禁煙包囲網。
一層、禁煙を考える人も増えてくるのではないでしょうか。
(『 ゆうなび 』 2019年 5月 23日放送)