肝硬変を防ぐためにも、採血・検診をしっかりと!
7月は、7/22~28「肝臓週間」、7/28が「世界肝炎デー」「日本肝炎デー」があります。
今回は肝臓の病気「脂肪肝」について、新潟大学病院の寺井 崇二(てらいしゅうじ)先生からお話しを伺いました。
Q .まずはじめに、そもそも肝臓にはどのような病気があるか教えて下さい。
基本的には慢性肝炎、アルコール性の肝炎、脂肪肝、肝硬変、肝がんなどがあります。
その他にも急性であったり様々な病気がありますが、
本日は慢性的なものを中心にお話しさせて頂きたいと思います。
Q.肝臓の異常は「気付きづらいから怖い」とはよく聴きますが、もう少し詳しく教えて頂けますでしょうか。
肝臓の異常の初期はほとんど、症状が全くないと言ってもよいくらいです。
慢性肝炎で肝機障害があっても、自覚症状がないのです。
Q.いま「自分は健康の問題は全くない」と感じている人でも、
もしかしたら肝臓を悪くしているかもしれない、ということですか?
そうです。しっかり検診を受けないと、異常が隠れているかも知れません。
Q.肝炎にはウイルス性のものもあるとお聞きしました。
はい。ウイルス性のものはB型あるいはC型肝炎ウイルス感染が原因のB型肝炎、C型肝炎などが有名です。
ウイルス性のものに関しては、採血ですぐに分かりますから、しっかり受けて頂ければ良いと思います。
最近はC型肝炎に関しては、1回は無料で受けられる検診機関もあるなど、
国を挙げてウイルス性肝炎の対策をしています。
Q.先程「脂肪肝」というお話しができましたが、「脂肪肝」とはどういうものなのでしょうか?
食べ物を食べた時、分解された栄養素がまず溜められるのが肝臓だとイメージして下さい。
食べたものがアミノ酸、ブドウ糖、脂肪酸に分解されて、肝臓に溜まります。
単に溜まっているだけの状態の脂肪肝であれば大丈夫ですが、
約10人にひとりが「脂肪肝炎」になります。
非アルコール性、つまりお酒も飲まないのに、脂肪性の肝炎が起こるということが非常に今問題になっているのです。
Q.10人にひとり、とはどのような方がなってしまうのですか?
大きな問題となっているのですが、はっきりとした原因は特定できていません。
もちろんひとつは肥満が考えられますが、
そんなに太っていない方でも脂肪肝炎になることもあります。
Q.脂肪肝は生活習慣病であるとも聴きました。
はい、その通りです。
日本人の戦後から今にかけての食生活の変遷を見ますと、
それほど総カロリーは変わっていないのに、脂肪の摂取量が増えています。
それに伴って、脂肪肝の方が増えてきているのです。
Q.食生活では、どのようなことに気を付ければ良いですか?
基本的には、脂っこいものは食べない、
あとは寝る前に過剰なものは摂り過ぎないようにすることが大切ですね。
Q.食生活以外では、どのようなことを心掛ければ良いでしょうか?
適度な運動をされることはことも大事ですね。
そして、まずは検診を受けることが重要だと思います。
脂肪肝の人は国内に2200万人いて、
そのうち、380万人の方が脂肪肝炎になっていると言われています。
Q.「脂肪肝炎」が進行していくとどのようなことがおきてしまうのですか?
一番問題なのは、簡単に言うと肝臓の細胞が脂肪を貯め過ぎて、パンクしてしまうことです。
ひとつひとつ肝細胞はかなり小さいのですが、その細胞がパンクしてしまい
肝臓の細胞が風船のように変化する、と表現するのですが、
その結果肝細胞が壊れ肝炎が起こります。
それがずっと続くと、肝臓が硬くなってきて、肝硬変になってしまうのです。
肝硬変は進んでしまうと、なかなか良い状態には戻りません。
肝硬変に対する治療は様々ありますが、多くの場合は進まないようにするものです。
対策としてその進んでしまう前の段階で、生活習慣を見直してもらうことが重要になってきます。
Q.なるほど。そのためにもまずは検診で、自分の状態を把握することが大切ということですね。
そうですね。まずはウイルス性がどうかを調べて下さい。
それではないということになれば、近く専門医にかかりお腹の超音波検査で肝臓に脂肪が溜まっていないかをチェックしてもらいましょう
脂肪性肝炎は大丈夫か確認してみてもらって下さい。
お酒の飲み過ぎが原因で起こる肝炎もありますが、
お酒を飲まずに非アルコール性の脂肪肝炎(NASH:Nonalcoholic steatohepatitis)になってしまう方がいます。
いままではウイルス性の肝炎が原因で、肝硬変になると思われていたのですが、
いまは、生活習慣の乱れが原因で脂肪肝になった方の、
10人にひとりが非アルコール性脂肪肝炎、その中の10%が肝硬変に進行します。
日本人でもものすごく増えています。
Q.先生が特に呼びかけたいことは何でしょうか?
現代人は忙しく、生活も不規則になりがちです。
生活習慣の見直しが一番ですが、できることにも限界があると思います。
きっちり採血し、お腹周りの検査もきっちりして、自分の状態をしっかり確認する、
また日々、体重計に乗って、自分の身体を把握・管理することが大切ですね。
Q.最後にリスナーにメッセージをお願いします。
肝臓の病気は自覚症状がありません。
いまは生活習慣の乱れが原因で、肝炎になり、肝硬変になる方が増えています。
是非しっかり検診を受け、異常値があったら早めに専門の医療機関に相談をして下さい。
健康寿命の延伸には、「採血・検診」がダイジ、ということですね。
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