今回は5月31日が「世界禁煙デー」、そして5月31日から6月6日の1週間が「禁煙週間」ということで

喫煙について新潟県 福祉保健部健康対策課 成人保健係の町田良介さんにお話を伺います。

 

Q 「禁煙デー」、「禁煙週間」とはどういったものなのでしょうか?

 

「世界禁煙デー」はWHO=世界保健機関が禁煙を推進するために、昭和63年(1988年)に制定した記念日になっています。平成元年(1989年)からは5月31日に定められました。この日は全世界で禁煙を推進するということになっています。

また厚生労働省では平成4年(1992年)から「世界禁煙デー」から始まる1週間を「禁煙週間」と定めています。

新潟県でも「世界禁煙デー」や「禁煙週間」に合わせて、広報番組などを通じて、タバコの危険性について皆様に知っていただいたり、禁煙や受動喫煙の防止に向けた呼びかけなどを行ったりしています。

 

Q 国単位ではなく、世界単位で定められた「禁煙デー」ですが、それだけタバコを吸うこと、喫煙というのは体に悪影響を及ぼすということですね?

 

喫煙は肺がんに特になりやすいという話もありますが、肺がんに限らず、ほとんどの部位のがんの原因になるということもいわれています。

また脳卒中や虚血性心疾患などの循環器疾患、慢性閉塞性肺疾患(=COPD) などの呼吸器疾患、糖尿病などの生活習慣病や歯周疾患など様々な病気の原因になります。

 

― 呼吸器だけではなく、様々な悪影響があるのですね。

 

日本では年間12~13万人が喫煙によって死亡していると推計されています。

また2016年の調査では、受動喫煙が原因で死亡する人は国内で年間15000人以上にも上ると推計されています。

 

Q 受動喫煙、つまり吸っているひとのタバコの煙を吸い込むことでも15000人以上が亡くなっていると。

  新潟県の喫煙率など喫煙に関する新潟県の課題はあるのでしょうか?

 

平成30年(2018年)に行なった「県民健康栄養実態調査」という調査があるのですが、この結果では、現在習慣的に喫煙している人の割合が男性で28.8%、女性7.7%となっていまして、男女ともに40歳代で最も喫煙率が高くなっています。

全国平均を見てみると、男性が29.0%、女性が8.1%になりますので、新潟県では男女とも喫煙率が全国平均よりもやや低い傾向にあります。

ただ年代別では男性の40歳代や女性の50歳以上の割合については全国平均を上回っているという状況にあります。

また職場や飲食店などで受動喫煙にさらされる機会も依然として多くありますので、そのような状況を減少させていく必要があると県でも考えています。

 

Q 新潟県が行なっている禁煙のための施策はどのようなものがあるのでしょうか?

 

禁煙を希望する女性同士が情報共有しながら一緒に禁煙するためのウェブサイト「にいがた禁煙女子」というものを運営したりですとか、禁煙外来を行っている県内医療機関の情報をホームページで紹介しています。

また Twitter や Facebook などでも情報発信しています。

また昨年度(2019年度)から「にいがたけんこうtime」というものをコンセプトに、健康づくりの県民運動に取り組んでおりまして、「タバコのない一服もある」というキャッチフレーズで、さらに禁煙への取り組みを進めてまいりたいと思っています。

 

Q そして4月1日に健康増進法が改正されました。

  これによって、今までタバコを吸うことができた場所、喫煙できた場所でも出来なくなったということですが、なぜ改正されたのでしょうか?

 

これまで国際的に見て、日本の受動喫煙に関する対策レベルは非常に低いものだったのですが、近年、オリンピックが開催された都市では、この受動喫煙防止対策が徹底されてきましたので、日本でも、今回の東京オリンピック・パラリンピックに向けて受動喫煙対策が進められてきました。

今回の改正は、特に屋内における望まない受動喫煙をなくすという趣旨から、平成30年(2018年)に健康増進法という法律が改正されました。特に健康への影響が大きいとされている子どもや患者への対策を徹底し、施設の種類や場所ごとに対策を講じることが定められています。

さらに昨年の4月1日に学校・病院・児童福祉施設・行政機関などが先行して、原則「敷地内禁煙」となりました。

そして今年の4月1日からは、会社・ホテル・飲食店などの施設と旅客用の船や鉄道が一部の例外を除き、原則「屋内禁煙」となりました。

 

―かなり広い範囲で禁煙になったわけですよね。

 

そうですね。ほぼ全ての事業所という形になりますね。

ただし、技術的な基準を満たした喫煙専用の部屋=「喫煙専用室」を設置した場合には、この中でだけ喫煙することができます。

また、タバコの販売許可を持っていて主食を主として提供していないお店、これはバーやスナックなどの店なのですが、こういう店はお店の全部または一部を「喫煙目的室」とすることができます。

 

Q 「喫煙専用室」と「喫煙目的室」の違いは何なのでしょうか?

 

「喫煙専用室」というのは本当に喫煙専用となっていて、喫煙するためだけの部屋で飲食などができない形になるんです。

「喫煙目的室」は喫煙しながら飲食もすることができます。

加熱式たばこについては、加熱式たばこ専用の喫煙室を設置した場合、その部屋の中で飲食も可能となっています。

また経過措置として、令和2年(2020年)4月1日時点で既に営業を行っている規模の小さい飲食店、資本金や出資金の額が5000万円以下、客席面積が100平方メートル以下といった条件がありますが、このような店には店の全部または一部を飲食しながら喫煙できるようにすることができます。

いずれの場合も喫煙可とする場合には標識の掲示が必要になり、店の外に掲示するものと実際に喫煙室がある所に両方貼る形になっています。

喫煙が可能な場所には、お客さんだけではなく従業員の方も含めて20歳未満の方の立ち入りが禁止されます。

こういった大きな動きがありますので、県では4月1日からの法律の全面施行に向けて飲食店や一般の事業所向けに周知を行ってきました。県の出先機関である保健所も含めて、多くのお問い合わせをいただいているところですので、今後も継続して一般事業所向けの普及啓発が必要だと考えています。

 

Q タバコを吸っている方からは、だいぶ厳しくなったなあという声も聴きますけれども、今後、もっと規制は厳しくなるのでしょうか?

 

規模の小さい飲食店は現在、まだ経過措置とされています。

このような施設の見直しを今後、厚生労働省は定めていますので、

この経過措置が終了することによって、奇声が厳しくなるということが考えられます。

また加熱式タバコも今後国による研究が進んで、受動喫煙による影響が明らかになれば、

規制が厳しくなる可能性も考えられます。

 

Q 今後、喫煙に関する新潟県の目標や目指す姿はありますか?

 

受動喫煙対策をはじめとした取り組みによって、成人の喫煙率また受動喫煙にさらされる機会を減少させていくことを目標としています。また同時にこれらに取り組むことはがん予防にもつながりますので、最終的には、がんを原因とする死亡者数を減少させることを目的としています。

 

―リスナーにメッセージをお願いします。

 

リスナーの皆様には、「世界禁煙デー」や「禁煙週間」という今回の機会に、今一度タバコの健康被害や、ご自身や周りの方の健康について考えるきっかけになれば幸いです。