6月4日から10日は「歯と口の健康週間」ということで、歯と口の健康について、新潟大学大学院 医歯学総合研究科 予防歯科学分野、そしてWHO世界保健機関 口腔保健協力センターの小川祐司教授にお話をうかがいます。

新潟大学の予防歯科学分野はWHO世界保健機関の協力センターという位置づけになっていて、様々な研究(・人材育成)などを行っているということです。

 

■ 口の健康に欠かせない「舌」

 

―歯と口の健康週間と聞くと、虫歯や歯周病予防のことではないかと思いますが、

 「口の健康」というのは具体的にどういうことなのでしょうか?

 

歯や歯茎のことについては皆さんイメージがつきやすいと思いますが、実は口の中には、もうひとつ大切な組織として「舌(した、ぜつ、ベロ)」があるのです。

舌は非常に重要な役割を持っていて、食べることや話すこと、そして体の健康状態も反映するという、とても貴重な器官となっています。

 

―ということは、舌はきれいにしておくことが大切ということでしょうか?

 

そういうことです。実は舌の表面には、「乳頭」という少しブツブツした凹凸があります。

この舌の乳頭に汚れがたまった状態を「舌苔(ぜったい)」と言います。

この汚れの正体は食べかすだったり、口の中の細菌だったり、いろいろなものが舌の乳頭のところに汚れとして付着しているのです。この舌苔をきれいに取るということがとても大事になってきます。

 

―舌苔があると臭いも気になりそうですけれども。

 

舌苔にはタンパク質が含まれていて、口の中にある虫歯の菌などが分解するのですが、そのときにくさい臭いを出す。これを皆さんよくご存じの「口臭」という形で認識されるわけなのです。

 

―口臭は気にされる方も多いと思います。舌は本当に大事なのですね。

 他にも舌をきれいにしていないと影響があるのでしょうか?

 

舌の掃除をしている人としていない人について、口の中の細菌の構造を調べてみたところ、

掃除をしていない人の口の中には、腹痛や下痢を引き起こすような悪玉細菌が発見されるということがあります。

 

―舌の汚れから、様々なリスクが浮かび上がるのですね。

 実際に「舌のケア」はどのようにしたら良いですか?

 

舌の掃除をする専門の「ベロブラシ」というものがあります。これを使って掃除をしていくことが大事になります。

舌の真ん中から奥手前にベロブラシを入れて、奥から手前に向かってブラシを動かす。

一回やったら繰り返さずに、一度、水で流してもらって再度、奥から手前に…とやっていただければと思います。

 

■「口の健康」には、日々の生活習慣も大事

 

―舌の掃除、早速やってみたいと思います。

 さて「口の健康」について生活習慣も大切だと聞きましたが?

 

口の中の汚れがなるべくつかないように、あるいはできにくいようにしていくことが大事になります。

特に皆さんにお伝えしたいのは、食べるもの

具体的には甘いもの(多糖類)をたくさん食べたり、粘着性のあるスナック菓子をたくさん食べたりすると

口の中が酸性になっている時間が多くなっている。それによって、虫歯のリスクが大きくなっていきます。

 

WHOは砂糖の一日当たりの摂取量を約25g(成人の場合)としています。

25gというのは、ティースプーンでだいたい5~6杯くらいで非常に量としては少ないのです。

 

―普通の料理にも砂糖が入っていますが、甘いお菓子やコーヒーを甘くして飲む方などは、あっという間に超えてしまっていそうですね。

 

大事なのは、自分がどれくらいの砂糖の量を摂っているのかというのを、ある程度、意識した生活を送ることが大切になってきます。

 

―しっかり意識したいと思います。 それでは、皆さんにメッセージをお願いします。

 

「ステイホーム」で皆さんの生活習慣を見直す時期になっていると思います。

こういう時こそ、お口の健康にも気をつけてもらいたいと思います。そして健やかな日々をお過ごしください。