■感染症予防にも大切な「口腔ケア」
いま私たちの生活の中で「感染症予防」が当たり前になっていますが、
専門家によると、感染症予防にはお口のケアも重要なのだそうです。
虫歯予防に欠かせない毎日の歯磨き。
歯と口の健康は生活習慣病や認知症の予防など、体全体の健康につながることがわかっています。
さらに、新潟大学大学院 医歯学総合研究科の小川祐司教授は「新型コロナウイルスの感染予防にも、口の中をきれいにしていくことは、とても重要なこと」だと指摘します。
小川教授によると、感染症予防には口を清潔にしておくことが大切で、特にある部分のケアが重要なのだそうです。
【新潟大学大学院 医歯学総合研究科 小川祐司教授】
「歯と同じように大事なのはベロの掃除」
■舌の掃除をしよう!
左は健康な舌。右は汚れがついた舌です。
小川教授によると、ベロの真ん中より奥の方が少し黄色くなっていることがあるが、それが汚れの塊だというのです。というのも、舌の表面はデコボコで汚れがたまりやすく、細菌が繁殖しやすい場所なのだそう。
日本歯科医学会連合会によれば口の中の細菌は酵素を出していて、この酵素が、ウイルスが体内へ侵入するのを促してしまうのだそうです。このため、細菌が多いほどウイルス感染のリスクが高まるのだそうです。(出典:日本歯科医学会連合会「新型コロナウイルス感染症について」)
また実際に口腔ケアを行うことで、インフルエンザの発症率が減少したというデータもあります。
(出典:日歯医学会誌)
小川教授は、「新型コロナウイルスの場合だとベロの上についている汚れが肺に入り、それがずっと増えていくと、より感染が重症化していくということがわかっている」と指摘します。
新型コロナウイルスに感染し症状が進むと、肺炎を引き起こすことがあります。そこへ口の細菌が誤って肺に入ると、肺炎が重症化するリスクが高まるのだそうです。
感染と重症化のリスクを減らすためにも、お口の清掃が大切なのです。
そこで注目されているのが、専用の舌ブラシを使った「舌磨き」です。
小川教授は「ベロの真ん中よりも少し奥のあたりにブラシの先を入れて、奥から手前に引くような感じで行います。そうするとブラシの表面に汚れがつきますので、再度掃除するのではなく水で汚れを洗い流してください」と説明します。
【ポイント】
・ブラシを往復させるのではなく、一方向に動かすこと
・やさしく5~10回程度行うこと
・細菌は寝ている間に増えるので、朝起きてすぐ舌を清潔にすること
ところで、この舌磨きを歯ブラシでしているという方はいませんか?
小川教授によると、「歯ブラシは固い歯を磨くためのもので、かたい歯ブラシで柔らかいベロの表面をこすってしまうと傷がついてしまう」とのこと。
舌の形や汚れの程度など、自分に合った舌ブラシを使うことが大切です。
■「舌磨き」に期待される効果!?
歯科医院でも患者に舌磨きを勧めています。舌磨きには感染症予防のほかにも様々な効果が期待されているというのです。
いくの歯科医院の幾野博院長は、「ひとつはエチケット面として口臭の予防ですよね。もうひとつは舌の表面がきれいになるので、味覚に対する感受性が高まり、味わいが良くなる。当然塩分濃度などが少なくて済む。塩分濃度が少なくなることによって高血圧症の減少・低下につながると期待されています」と話します。
歯の治療は患者が長時間マスクを外すため、感染を心配し通院を控える人が少なくないそうです。
しかし、治療が遅れると重症化する恐れもあることから、幾野医師は、「かかりつけ医に相談してほしい」としたうえで、「今までの生活様式が変わってしまうことから、つい食生活が不規則になったり、たばこの量が増えたりした人もいるかもしれない。口腔のケアをしておかないと悪くなる一方だ。口は外部からの取り込み口で、ひとつの防波堤になっていると考えていただきたい」と話します。
感染症予防のためにも今一度、自分の口の状態を見直す必要があります。