今回は「たばこの受動喫煙」について特集しました。
タバコの葉を燃やさずに熱を加える「加熱式たばこ」は、ここ最近、若者を中心にユーザーが増えていますが「健康被害が少ない」と考えている人もいるのではないでしょうか。
ただ、健康被害が少ないかどうか、その科学的根拠は十分ではないとして専門家は警鐘を鳴らしています。
■流行の“加熱式たばこ”実態は…
加熱式たばこを使った実験映像です。
加熱式たばこを吸って、息を吐くと…口からかなりの量の粒子状の物質が出ていることが分かります。
加熱式たばこは煙が見えにくく、紙巻きたばこに比べるとにおいも限定的なのが特徴です。さらに、たばこを吸ったときの煙=主流煙に含まれている発がん性のあるアセトアルデヒドなど9つの物質は、紙巻きたばこと比べると、いずれも4分の1以下の割合であるという研究データも上がっています。
街の人にインタビューすると…
たばこを吸う人「加熱式たばこに変えました。そんなに肩身は狭くないかなと思うのですが。」
吸わない人「加熱式たばこの匂いの方が、紙巻きたばこよりも嫌ですね」
県内でたばこを吸う人に何を吸っているかを聞いた新潟県の調査によると、全体では紙巻きたばこが7割を超えますが、加熱式たばこの割合は20代~40代を中心に高くなっています。
紙巻きたばこと比べると、加熱式たばこの方が健康リスクは低いようにも思えますが…
【新潟大学医学部保健学科 関奈緒教授】
「加熱式たばこの場合は『有害物質が9割減』などと言っていて、かなり大々的に皆さん有害性がなくなったと皆さん思い込んでいるのだが、本当は一部の有害物質についてのデータでしかない」
関教授が指摘した研究は9つの発がん性物質に関するデータでしたが、加熱式たばこが作られてから日が浅く、それ以外の化学物質のデータなどはまだ十分に示されていません。
これまでの紙巻きたばこに入っていなかった成分によって、新たな健康被害が出てくる可能性はあるということです。
またWHO=世界保健機関は「有害物質の軽減が健康リスクを低減させるかどうかは現時点で科学的根拠はない」としていて、「たばこ製品は有害で加熱式たばこも例外ではない」としています。
【新潟大学医学部保健学科 関奈緒教授】
「『加熱式たばこは安全だ』と思い込まないことが大事かなと思います。」
またたばこを吸っていない人に影響が出る受動喫煙にも注意が必要です。先ほどの実験映像です。加熱式たばこを吸い、吐いてから数十秒で粒子状物質は口元から3メートル離れた地点に達しました。
【新潟大学医学部保健学科 関奈緒教授】
「家の中で吸っている方が結構増えているが、においがないので気がつかない。これを『ステルス型』と言っているが、『ステルス型』の受動喫煙で、知らないうちに受動喫煙を起こしてしまっている」
また紙巻きたばこでも、受動喫煙というと、たばこの先から出る煙=副流煙を吸うイメージがありますが、それだけではないと関教授は話します。
【新潟大学医学部保健学科 関奈緒教授】
「現在、『受動喫煙』という場合には、副流煙だけではなくて、喫煙者が吐く息=呼出煙と言いますが、呼出煙の中にもかなり有害物質が入っています」
関教授によると、たばこを吸った人と会話をする、煙がかかった洋服や家具、壁に付着したたばこのにおいを吸引することで受動喫煙が起こるということです。
■「望まない受動喫煙」を防ぐ取り組みとは…
新潟大学の関教授によると、たばこによる健康被害は慢性的なものが考えられていて、がんや心筋梗塞などは10年、20年単位で発症することから、まだ具体的なデータは出ていないということです。
こうした中で健康増進法が改正され、2020年4月に全面施行されました。望まない受動喫煙を防ぐため県、そして企業も対策をとっているようです。
新潟県庁では、これまで15か所あった喫煙所を、法改正に伴って屋外の2か所に減らしました。
また県民に対して呼びかけも強化しています。
【新潟県福祉保健部健康づくり支援課 町田良介主事】
「原則、屋内禁煙など、法律の順守の徹底をお願いしたいと思います。」
一方、民間企業では思い切った対策をとる会社もあります。「カワウチ禁煙法」という独自の禁煙ルールを実施している新潟市秋葉区の川内自動車です。
「カワウチ禁煙法」は「一緒に働く仲間が健康で少しでも長く働いてもらいたい」という思いから、2015年から始まりました。働いているときだけでなくプライベートでもたばこを吸わない人には毎月2000円の禁煙手当も支給しています。
30年近く吸っていたたばこを去年からやめたという従業員は…
【川内自動車 吉田和嗣さん】
「最初は、仕事中我慢できるかなという不安があったが、吸えない環境だったので、まったく気にならなかった。」
独自の禁煙ルールが始まった2015年の喫煙率は47.5%でしたが、現在は21%まで減少しました。
一方、たばこを愛好する人から見ると、法律の改正によって、さらに肩身が狭い世の中になりました。そこでこちらのお店では…
【珈琲倶楽部 新和本店 伊藤亮太さん】
「たばこを吸う人も吸わない人も、安心できるお店にすることを心掛けています。」
これまで県内25店舗すべてで喫煙可能でしたが、現在では喫煙専用ルームを設置し、それ以外は完全に禁煙としました。
よりよい社会をつくるためにたばこを吸う人も、吸わない人もまわりの人への配慮は欠かせません。吸う人も吸わない人も受動喫煙について正しく理解して、よい環境をつくっていくことが必要ですね。
・流行の“加熱式たばこ”実態は…
動画はこちらから
・「望まない受動喫煙」を防ぐ取り組みとは…
動画はこちらから