2021年2月10日放送

カーボンニュートラルへ 利用して削減する画期的事業

ライン

カーボンニュートラル。私たちは生活する上で二酸化炭素を排出していますが、その排出量と吸収量がプラスマイナスゼロの状態を言います。菅首相が「2050年のカーボンニュートラル」を目標に掲げたことで、新潟県内でも動きが加速しています。

新潟県柏崎市西山地域で、7日に開かれた説明会。住民に示されたのは、風力発電の計画です。柏崎市と出雲崎にまたがって建設の計画が進む風力発電について、エネルギー会社が説明しました。

【参加した住民】「国全体で、世界が動いている最中だから、風力にしろ、太陽光にしろ、一生懸命やってもらっているのは評価できると思いますね」

菅首相が就任後の所信表明で掲げた目標は、国内の経済界、そしてエネルギー業界の方向性に大きな影響を与えました。

【菅首相】「わが国は2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。すなわち、『2050年カーボンニュートラル』。脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言します」

菅首相は、二酸化炭素の排出量と吸収量がプラスマイナスゼロの状態となる「カーボンニュートラル」を、2050年までに目指すと宣言したのです。

【菅首相】「カギとなるのは次世代型太陽光電池。カーボンリサイクルをはじめとした、革新的なイノベーションです」

民間の研究機関によると、再生可能エネルギーによる発電は火力発電と比べて、二酸化炭素の排出量を大幅に抑えられるとされています。このため日本は、電源構成の中で再生可能エネルギーや原子力などによる「非化石電源の比率」を増やしたい考えです。

再生可能エネルギーの一つが風力発電で、柏崎市と出雲崎町で建設計画が進んでいます。説明会を開催した企業は、二酸化炭素を削減し再生可能エネルギーの供給を通じて、地球環境問題を改善することが使命の一つと強調しました。

山沿いに18基ほどの風車を建てる予定で、およそ2万7000世帯分の電力にあたる、最大6万9000キロワットを発電する計画です。住宅を見下ろす山地での建設に、住民からは騒音や人体への影響などを心配する声もあがりました。

【参加した住民】「分からないことだらけの中で、事案を無理に推し進めるということは見直さなきゃいけない、考え直さなきゃいけない。そういったことを含め、今回の事業者の方には配慮をお願いしたい」

ただ、住民はこうした再生可能エネルギーの必要性も感じているようです。

【参加した住民】「自然エネルギーを使って発電をしていくということは、やらなきゃいけない試みだと私も思っています」

一方、新潟県内では、二酸化炭素を活用した新しい発電サイクルの実証試験が始まろうとしています。

【国際石油開発帝石 君波成人東日本鉱業所長】「我々、この枯渇したガス田を有効利用しようということで...」

計画を進めている国際石油開発帝石(INPEX)東日本鉱業所長の君波成人さんです。

【国際石油開発帝石 君波成人東日本鉱業所長】「天然ガスを利用して水素を作るというのは、国内で初めての事業と認識」

国際石油開発帝石は石油や天然ガスの開発を行う企業で、長岡市に国内最大級のガス田を持ち、総距離1500キロメートルのパイプラインは関東とつながっています。この国際石油開発帝石が柏崎市のガス田跡地で進めるのは、天然ガスから水素を製造し、その水素で発電を行う計画です。さらに...。

【国際石油開発帝石 君波成人東日本鉱業所長】「そのときに、水素とともに出てくるCO2(二酸化炭素)については、地層に戻して、取り切れない天然ガスや原油を採取しようと。それで採取できたメダンガスからまたさらに水素を作る」

水素を作る過程で発生する二酸化炭素を利用して、古いガス田に残ったガスを圧力で押し出します。その後、二酸化炭素は地中に戻されるため二酸化炭素の量を削減できる他、ガスを回収することもできるそうです。この画期的で国内初の実証試験は、政府が「カーボンニュートラル」を掲げたことで急速に進んだと言います。

【国際石油開発帝石 君波成人東日本鉱業所長】「事業環境の変化と転換。業界で最初に手を挙げて、実証プラントを動かすということに重きを置いている」

発電した電気は、エネルギーの地産地消の観点から柏崎市に還元される予定です。

【柏崎市 桜井雅浩市長】「非常に理想形に近い電力の供給源」

この取り組みについて柏崎市の桜井市長は、市が進める「脱炭素化へのエネルギー政策」に適していると熱烈に歓迎しています。

【柏崎市 桜井雅浩市長】「非常に大きな計画、非常に大きな期待を持てる。これからの時代は、再生可能エネルギーを環境エネルギーとして、柏崎市の新しい産業として組み立てていきたい」

新年度からは社名を一新して「石油」の二文字を外し、水素の製造と二酸化炭素の利活用という新たな構想に挑みます。ただ、コストや発電量などの課題も抱え、チャンスでもありチャレンジでもあると話します。

【国際石油開発帝石 君波成人東日本鉱業所長】「石油・天然ガス開発の上流部門の事業は、これからも継続していく中で、新たな事業を展開していかなければいけない。カーボンニュートラルに少しでも我々の事業が貢献できるのであれば、それは一歩前進しているのではないかと思います。大きなチャレンジでもあり、大きなチャンスでもある」

温暖化を防ごうと、政府が掲げる2050年カーボンニュートラル。新潟県内でも新たな取り組みが始まっています。

ライン