2021年5月5日放送

銅で水がきれいに 中越地震の避難所で活躍 浄水器を世界に

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わずか0.04ミリの銅線を使った携帯用簡易浄水器。2004年、新潟県の中越地震で活躍した浄水器は令和の時代を迎えて、SDGsという視点でも注目を集めそうです。

髪の毛の3分の1ほどの細さの繊維の束。測ってみると、0.04ミリしかありません。この繊維、実は銅で作られているのです。

作っているのは、銅素材や銅繊維の製造などを手掛ける三条市の「コデラカプロン」です。

【コデラカプロン 古寺保治社長】「今回の新型コロナウイルス禍で銅が注目を浴びたので、銅に携わるいろいろな製品開発ができると思う」

コデラカプロンは銅を繊維状にする特許を持ち、その銅線を使って様々な商品を開発しています。携帯型浄水器「カッパー君」にも、銅線が入っています。銅線が水をきれいにするというのですが、いったいどういうことなのでしょうか。その実力を見せてもらいました。

【古寺保治社長】「水道水に残留塩素測定液を入れたら、黄色く反応している状態なんですね。これだけ黄色くなるということは、塩素濃度が非常に高いということ」

コップに入っているのは水道水です。塩素を量る試薬を入れると、黄色くなりました。これは水道水に塩素が含まれていることを示しています。ここに銅線を入れると、あっという間に水が透明になりました。銅が水中で化学反応を起こし、その際に塩素を取り除くのだそうです。

ただ、銅の板や一般的な太さの銅線では、大きな効果はありません。非常に細く表面積が大きくなる繊維状の銅だからこそ、塩素を取り除く力が発揮されるそうです。

【古寺保治社長】「スーパーなんかに行って、水を買ってくるお客さんがいっぱいいる。それ買う必要がない。おうちで全部水が作れる。繰り返し繰り返し、こんな小さいので500本も作れる」

コデラカプロンは、古寺さんが21年前に立ち上げた会社です。以前、勤めていた会社で40か国以上を飛び回っていた古寺さんは、ペットボトルで飲み水を買う習慣のある海外で、大量のペットボトルがごみとして捨てられているのを目の当たりにしました。

【古寺保治社長】「当時からペットボトルのごみの山で、なんとかリサイクルできないかなと。(ペットボトルは)何回も使えるじゃないかと。携帯浄水器だったらおいしい水ができて、自分で作れるじゃないか。だったらごみも減らせるね。それからなんです、スタートは」

当時の流行りの言葉で言えば「エコ」。令和の時代で言えば、SDGsの考え方から生まれたこの携帯浄水器。最初に注目されたのは、2004年に新潟を襲ったあの地震でした。

当時の川口町で震度7を観測し、68人が犠牲となった中越地震。多くの世帯で断水し、自衛隊などの給水車が応援に入りました。ただ、給水車の水の中には、塩素濃度が高いものがあったそうです。

【古寺保治社長】「避難所に避難していたお母さんが、その水でお湯を沸かして赤ちゃんに粉ミルクを作って飲ませようとしたが、赤ちゃんが飲まなかったそうです」

こうした被災者の声を聞いた新潟県から相談を受け、古寺さんは200個の携帯浄水器を県に寄付しました。

【古寺保治社長】「携帯浄水器を使ってくれたお母さんが、『赤ちゃんが今度、ゴクゴク、ミルクを飲むようになりました』ということで、県を通じて連絡があった。うれしかったですね」

この日、同じ三条市にある金属製品の卸売り業者が、古寺さんのもとを訪れました。

【ナガオカ.リコー 長岡信治社長】「コデラカプロンさんが発明した銅が入っている。汗のにおいが消える。素晴らしいタオルになったのでは」

コデラカプロンは浄水器だけでなく、新たな製品の開発にも取り組んでいます。銅線をタオルに入れ込むことで、汗のにおいを取り除くタオル。また、除菌効果があるという銅の糸を織り込んだフィルターを入れ、感染防止効果を高めたマスクも作りました。

【長岡信治社長】「今の時期になくてはならないような技術だと思う。(普通の金属とは)違う金属として、違う販売ルートを模索しながらこれから売っていきたい」

【コデラカプロン 古寺保治社長】「銅の可能性は無限ですね。もっともっと海外にも(事業を)進めたい。特に後進国とか発展途上国の人たちはいろいろ困っているので、そういった方面にも影響できるぐらいの力がつけばいいなとは思っている」

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