2021年6月16日放送

「もったいない」から生まれた廃材アート

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新潟県長岡市栃尾地域で活動する男性が、廃材を利用したアート作品を作っています。

まさに水の中を泳いでいるような、勢いのあるイワシの群れ。1000匹もの大群、その数に圧倒されます。1匹1匹をよく見てみると、実は本来は捨てられるはずの廃材でできているのです。

「鰯」の制作者・加治聖哉さん(25歳)。廃材アートを始めたきっかけは、美術を学んでいた大学時代の「もったいない」という経験でした。

【廃材再生師 加治聖哉さん】
「あふれんばかりに材料が捨てられていて、まだまだ使えるのに捨てるんだと思ったのが始まりで、すごくもったいないなと思って」

加治さんは地域おこし協力隊員として長岡市栃尾地域を拠点に活動し、廃材からクジラなど生き物のオブジェを作ってきました。例えば作品「鰯」は、織物工場で使われていた木製の糸巻きなどが姿を変え、アート作品として生まれ変わりました。

6月初め、加地さんが訪れたのは栃尾地域の工務店です。加治さんは地元の企業などに協力してもらい、捨てる予定の廃材を譲ってもらっています。

【田中工務店 田中浩一代表】
「普通だと処分しますね。結局、これ解体で出てきたやつだと思うんですけど、なかなかこれをまた建材にというのは難しい

工務店もなるべくごみが出ないよう工夫して作業していますが、どうしても活用しきれない部分が出てきてしまいます。

【田中工務店 田中浩一代表】
「うちらにとってみると価値がマイナスなものを、彼がプラスにしてくれてるっていうのは非常にいいと思います」

【廃材再生師 加治聖哉さん】
「こうやって協力して下さる方がいらっしゃるので、本当にありがたいですね」

加治さんの「廃材水族館」は5月に、長岡市西中野俣にある杜々の森名水公園内にオープンしました。動き出しそうなリアルさと、廃材を利用したユニークさにお客の目が奪われます。

【訪れた人】
「思ったよりもすごいです。普通だったら捨てちゃうものですけど、それがこういうふうになるんだなと思って」

高さ3.5メートルの「芭蕉旗魚」は、金属で背びれや鱗(うろこ)が表現されています。加治さんのこだわりのひとつが、原寸大による制作です。そんな加治さんが現在取り掛かっているのは、なんと全長9メートルにも及ぶジンベイザメです。

【廃材再生師 加治聖哉さん】
「パズルのように組み合わせて作品が作れるのは結構なプラスだと思っていて、廃材って人から見たらごみですけど、私から見たら宝なので」

廃材だからこその、思わぬ素材との出会いもあるそうです。

【廃材再生師 加治聖哉さん】
「これはもう"Sレア素材"だなとか、これめったに手に入らない形だなっていうのが面白くて」

アートあふれる栃尾地域を目指し活動する加治さん。意識しているのは県外、世界への発信です。

【廃材再生師 加治聖哉さん】
「捨てられた物に関してはまだまだ可能性がありますよって。あなたが必要なくなったとしても他の人は必要だったりするし、使い道は無限にあると分かっていただけるとこの活動に意味がある。そういうふうに考えるきっかけを提供できればいいかな」

捨てられるはずの廃材から見出された「可能性」。栃尾から環境へのメッセージが投げ掛けられています。

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